今年の七夕の夜は薄曇、夜中に窓の外を見れば下限の月が情緒良く薄月夜の赴きあり。万葉の昔から悲恋の話と、一年も恋焦がれる恋愛の情として様々に話が語られたに違いない。
日傘差し私を待つ人がいる、片田舎の駅にて黄昏る時まで語り合った。さようならまた逢おうよ、蝉時雨の田舎道その女(ひと)は振り返り、また振り返りつつ夕暮れのなか日傘が揺れる、日傘の上には色鮮やかなノウセンカズラの花が枝垂れ咲いていた。
『天の河霧立ち渡り、彦星の楫(かじ)の音聞こゆ、夜の更(ふ)けゆけば』 山上憶良
『天の川 楫の音聞こゆ 彦星と織女と今夜逢ふらしも』 詠み人知らず
なんというロマンチックな歌なのだろう一年に一度織姫に会いたいが為に天の川を彦星が急ぎ急ぎ櫓を漕ぐ音が聞こえるではないかというのだ。