伊豆の山荘にて、この二日間、二晩続きの雨であった。『小夜時雨』・『秋霖(しゅうりん)』美しい言葉があるものだ、『秋霖(しゅうりん)』とは、ちょうどこの時期降る雨のことを言う。雨にまつわる事柄を様々紡ぎ出そうと物思いにふけるが、いにしえの文豪のようには・・・。この修善寺にも文豪所縁の土地だが、諸説は又何れ書きたいと思う。如何せんこの雨ではあまり遠出も出来ぬ、男どもで番傘色気もなく、青葉の雨だれのなか山荘の廻りを散策したが、雨足が強くかなり濡れてしまって宿に戻れば、馴染みの女将が、タオルを持ってきてくれ、『遣らずの雨よねぇ、温泉に入ってお体を暖めてください』と振り向きかげんの女将の着物の帯がなぜか色濃く見えた。
若干艶かしくも、厚かましくも、色恋歌なんぞを。
忍ぶれど 色に出でにけり 我が恋は 物や思ふと 人の問ふまで 『百人一首』
やは肌の あつき血汐にふれも見で
さびしからずや道を説く君
許したまへ あらずばこその今のわが身
うすむらさきの酒うつくしき 『与謝野晶子』