北風の強き昼下がり、酒が呑めぬということが、侘しさに繋がるのかもしれぬ何か後ろ髪引かれる思いで友と別れた。夕刻黄昏の雑踏の中電車に乗る。車窓の向こうには夕焼けの赤く染まった武蔵野の風景が見え隠れしている。マンションや、雑居ビルの合間より茜色の空の中に黒い雄大な富士山も見える。悲喜交々であった日本の一日が今荘厳に終わろうとしているようだ。
『門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし』 一休宗純
正月の詠んだ歌であろうが、私は楽しいものはどこまでも楽しいと思う、悟れぬ凡人の愚かな考えなのか。