パステルカラーで描いたような鰯雲・・・・。その宿は、もみじ葉が散り敷き詰められた路道の先にあった。なだらかな坂を上がり茅葺屋根の引き戸をくぐる。ようこそお越しくださいませと、端正な佇まいの宿の女将・・・昨夜からの雨で庭の落ち葉が打ち水されていてとても鮮やか。食事も宴も終わり部屋に戻ると香が焚かれてあった・・・・。もうすっかりと夜の帳も下り、夜も更けようとする時刻、露天風呂へと・・・ライトアップされた紅葉がこれまた美しく、もみじ葉ひとひら舞い湯に浮かべてなんぞ想はん・・・・・。
うつりゆく時 見るごとに心いたく 昔の人し思ほゆるかも
ひさかたの雨は降りしく 石竹花(なでしこ)がいや 初花に恋ひしき我が背 大伴家持