先日所用にて日本橋から銀座へ、すでに町の景色はクリスマス、四丁目の角にしばし佇むふと昔と変わらぬ都会の雑踏の何か知れぬ香りが私を包む・・・・、女人(ひと)恋しくここに待ちて、待る々女人(ひと)も待ちわびて、互いに手を繋ぎ愛を語り合った街角の風景は、いにしえの色褪せた青春の郷愁のなかに・・・・・、気が付けば黄昏の雑踏の中に過ぎ去りしあなたの面影が、あなたによく似たうしろ姿が街路樹の向こうに・・・・。
先日三日ほど入院をした時に思わずこの歌が浮ぶ、啄木のどこまでもやさしく繊細なまでの歌が忍ばれる。
脈をとる手のふるひこそ かなしけれ 医者に叱られし若き看護婦!
脉をとる看護婦の手の、 あたたかき日あり、つめたく堅き日もあり。
『石川啄木』